温度応答性N-イソプロピルアクリルアミド、正荷電成分ジメチルアミノエチルメタクリレート、疎水性成分ブチルメタクリレートをモノマーユニットとし、相転移温度を20℃〜37℃の間に有するランダムコポリマーとグラフトコポリマーを合成した。 ランダムコポリマーは3つのモノマー成分の比を変えることにより、同じくらいの相転移温度を持つものでも、DNAとの結合性に影響する正電荷成分含量を変えたランダムコポリマーを作製した。これらのランダムコポリマーとプラスミドDNAをコンプレックス形成させ、それにEtBrを加えることで、コポリマーのDNAとの結合力を比較したところ、相転移温度の上下で結合力が大きく変化することが観察された。これは温度変化によって核内でDNAをキャリヤーポリマーから解離して遺伝子発現させるために重要な性質が定量化できたことを意味する。また、この結合力は正電荷成分の割合が高いポリマー程高いことがわかった。レポーター遺伝子の発現は正電荷ユニットが20mol%のものが非常に高いことが観察された。 グラフトコポリマーは側鎖を温度応答性発現のポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、主鎖を正荷電のポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)としたものを合成した。このポリマーは多量の正荷電成分を含んでいるにもかかわらず、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ホモポリマーの相転移温度である32℃で相転移現象を示す。このことにより、DNA結合のための正荷電の含量とは独立して、相転移温度を制御できる方法を確立した。
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