研究概要 |
本研究の目的は、エンドトキシンであるLPS(lipopolysaccharide)にを投与することによって引き起こした急性腎不全時の腎皮質における微小循環障害(播種性血管内凝固症候群disseminated intravascular coagulation, DICの状態)を糸球体レベルで可視化し、血流動態の急性変化を測定し、腎循環調節メカニズム(PAF阻害薬CV3988とヘパリンの効果)を微小循環レベルで解析することである。血小板活性化因子「Platelet Activating Factor, PAF」の阻害剤は、PAFを抑制するので、血小板が活性化されず、その凝集を阻止し微小血管循環が閉塞するのを防ぐ働きがある。 平成14年度の計画を予定通り全うし、平成15年度の計画(1)生体腎を用いた血流速度計測の評価 2)誘発した急性腎不全の観察)も、予定通り遂行することが出来た。 本年度の新たな結果は以下の通りである。CCD生体顕微鏡を用いて腎微小循環をLPSを投与し(5mg/kg,10mg/kg)、生じた微小循環障害を生理条件下にin-vivoにおいて血流速度測定で調べた。LPSの投与により糸球体毛細管での血流速度の濃度依存性の低下が認められ、濃度依存性にDICが誘発された。ヘパリンを前投与したLPS群では、DICの進行を軽度であるが抑制した。CV3988を前投与したLPS群では、CV3988が血流速度の低下を妨げ、ほぼDICへの進展を阻止した。ヘパリンとCV3988を前投与したLPS群では、血流速度の低下は全く認められなかった。DICにおける血流障害にはヘパリンよりCV3988が有効であり、さらにヘパリンを加えることでより効果が増強され、血流速度を保ちDICへの進展を妨げることが分かった。このことから、DICにおけるヘパリンとPAF阻害剤を併用した治療法の新たな可能性が期待される。
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