研究概要 |
本研究の目的は、エンドトキシンであるLPS(lipopolysaccharide)によって惹起される播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation, DIC)時の腎皮質における微小循環を可視化し、糸球体での血流速度を測定することで、DICによる腎微小循環障害および血小板活性化因子(Platelet Activating Factor, PAF)阻害薬(CV3988)とヘパリンの効果を解析することである。PAF阻害剤は、PAFを抑制するので、血小板が活性化されず、その凝集を阻止し微小血管循環が閉塞するのを防ぐ働きがある。CCD生体顕微鏡を用いて腎微小循環をLPSを投与し(5mg/kg,10mg/kg)、生じた微小循環障害を生理条件下にin-vivoにおいて血流速度測定で調べた。 LPSの投与により糸球体毛細管での血流速度の濃度依存性の低下が認められ、DICが誘発された。LPSにヘパリンを前投与した群では、ヘパリンにより血流速度を指標とした評価からすればDICの進行を軽度であるが抑制することができた。LPSにCV3988を前投与した群では、CV3988によってさらに血流速度の低下を妨げ、ほぼDICへの進展を阻止出来ることが分かった。LPSにヘパリンとCV3988を前投与した群では、双方の効果により血流速度の低下は認められず、DICへの進展は全く抑制されることが分かった。ヘパリンとCV3988をそれぞれ単独投与した場合、血流速度はほとんど変化しなかった。DICにおける血流障害にはヘパリンよりCV3988が有効であり、さらにヘパリンを加えることでより効果が増強され、血流速度を保ちDICへの進展を妨げることが分かった。このことから、DICにおけるヘパリンとPAF阻害剤を併用した治療法の新たな可能性が期待される。
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