リチウム二次電池の高容量化の基礎研究として、電池を構成する正極活物質、負極活物質、有機電解液に加え、正極、負極および電解液に加える導電剤についての研究を行った。電池充放電特性を評価するために、8チャンネル電池充放電システムを備品として導入した。充放電サイクル特性を向上させるため、新規な導電付与剤を見出すことができ、投稿準備中である。正極活物質の探索により、新規な3種類の物質を見出した。これも投稿準備中である。負極活物質の探索では、グラファイト以外の炭素系材料のを調査・検討し、従来使われているグラファイトの約5倍の放電容量をもつ物質を見出した。これらについても現在投稿準備中である。 これらの物質探索において、研究の初期に第一原理バンド計算、MO計算を駆使し、対象とする物質の絞り込みを行うため、ワークステーションを導入し、これによる計算結果を参考にして物質群を選んだ。固相反応、ゾルーゲル反応等の方法で物質を作製した後、リートベルト解析により結晶構造の精密化を行った。原子座標、占有率、格子定数などの結晶学パラメータを特定した。電気伝導度、UV-VISによる光学バンドギャップ測定、導入した蛍光分光光度計による光学遷移エネルギー値から先のバンド計算結果の妥当性を評価した。以上の準備により、新規な正極・負極活物質をはじめ、非水系有機電解液の組成および導電付与剤に関する基礎的なデータを得、諸成果について投稿準備中である。 次年度の最大の課題としては、充放電のサイクル特性を維持するための導電付与剤の選定である。これに関しては、今年度すでに充放電サイクル特性を向上させるための添加剤効果を確認しており、従来の材料をはるかに凌ぐ初期充電・放電容量をもつ新規な正極・負極活物質の特性を長時間保たせるための研究が重要である。
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