研究概要 |
本年度は収集した空間データの多様な分析を進めた.エジプト調査班においてはエジプト政府統計局のデジタル地図と,独自にカイロ大都市圏郊外における家計調査(カイロ郊外の2地区計400世帯の出身地,家族構成,所得,学歴など野平リング調査)で得たデータを組み合わせ,データをGISにより空間解析することにより,20世紀後半のエジプトにおけるマイグレーションの詳細な分析,移住者の発生する地域の特性や空間分布,移住者そのものの社会経済的特性,カイロ大都市圏を形成する地域の空間構造などが明らかになりつつある. 一方エジプト全土の古地図のデジタル化がひととおり完成し,今後のエジプト近代経済史研究のベースマップとしてデータを蓄積しつつある. 中央アジア調査班においては,灌漑水路網を中心に地形(斜度)など自然環境と民族分布の関係を解明し,フェルガナ盆地の地域史を新たな角度から再構築する検討を進めている.文献史学と自然地理を活かしたGISの融合による新しい知見が得られつつある. 中国調査班においてはやはり全国的なマイグレーションを対象に分析を進めつつある. 空間解析班においては上記の進行状況をもとに,古地図などの限定されたデータから灌漑水利システムを空間解析の手法で解明できるかを中心に,ネットワーク分析を基本に考案し,それによる新たな分析方法の検討を進めている.
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