平成15年度には、主として、銀行監督上の問題点、すなわち、クレジット・デリバティブの自己資本比率規制上、大口信用供与規制について調査・分析を行った。カバーした範囲は、バーゼル委員会の規制および市中協議案、ヨーロッパ委員会の動向、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどのアングロ・サクソン系の国々に加え、とくに、ドイツのマックス・プランク研究所を拠点として、フランス、イタリア、オランダという大陸法系の国々における規制を調査した。この結果、イギリスがバーゼル委員会の動向に合わせて規制を修正するのみならず、バーゼル委員会の考え方に影響を与えているのではないかと推測された。オランダやフランスもバーゼル委員会の市中協議案をふまえて規制の見直しを行っているが、日本と同様、スペインなどは個別に対応しているようである。 他方、残念ながら、ギリシャ、ポルトガルおよび北欧諸国(フィンランドを除く)については、十分な研究を行う時間的余裕がなかった。平成17年度に補充したいと考えている。 なお、会計士協会などを訪問して、クレジット・デリバティブの会計および税務についての文献・資料を収集することができ、平成16年度以降の研究に資するところが大きかった。とりわけ、税務については、各国の対応が進みつつあるのに対して、会計に関しては、いまだ議論の途上にあり、国際会計基準の方向を見極めて対応しようとする国が多いことがとりあえず明らかになった。
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