本年度は出芽酵母細胞周期G2/M期進行に関する以下の2研究テーマについて解析した。 1)スピンドルチェックポイントコントロールに関与する脱リン酸化酵素PP2AのBサブユニットCdc55の機能解析。 M期インヒビターPds1とサイクリンClb2の量を細胞周期を同調した系で経時的に調べたところ、スピンドル脱重合剤ノコダゾール存在下において、cdc55変異株における挙動はbub2変異株と同様であった。Bub2はM期脱出のために必要なTem1-GTPaseのGAPである。Tem1が関与するMENと呼ばれる経路が活性化しているかをその下流で発現するAmn1で調べたが、ノコダゾール存在下では発現していなかった。そこで、Cdc14脱リン酸化酵素の核小体局在を制御しているNet1タンパク質を調べたところ、cdc55変異株では脱リン酸化型が多かった。従って、Cdc55はNet1を間接的に制御し、Cdc14脱リン酸化酵素の核小体からの解放に関与していることが分かった。 2)SUMOリガーゼのドメイン解析。 SUMOリガーゼの一つ、Ull1/Siz1は細胞周期依存的にその局在を核から細胞質のネック領域に変化させ、基質認識の特異性を制御していると考えられる。そこで、904アミノ酸からなるUll1/Siz1タンパク質のドメイン解析を行うため、種々の欠失変異を作成し、それらのリガーゼ活性、局在などを調べた。その結果、リガーゼ活性にはRING様構造を含む中央領域とそれ以外に、隣接するN末端領域PINITドメインも必須であった。これに対し、RINGのC末端隣接領域に存在し、2-hybrid法でSUMOと強く結合するSXS配列はリガーゼ活性に必要でなかった。また、C末端領域を欠くとタンパク質が安定化し、核に局在した。さらに、N末端領域に存在するDNA結合領域と考えられるSAPドメインは核に局在するのに必要であった。従って、RING様構造とPINITがSUMOリガーゼのコアー領域であり、その他の領域はリガーゼ酵素活性化制御というより、局在や、安定性を制御することによって基質認識の特異性などに寄与していると考えられる。
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