高分子2本鎖RNAレプリコンは、イネだけでなく、ソラマメ、オオムギ、インゲンマメ等、単子葉、双子葉を問わず植物に広く存在する。しかしながら、イネとソラマメの2本鎖RNA以外は、塩基配列すら明らかにされていない。本年度は、インゲンマメ2本鎖RNAのHelicase領域およびRNA依存RNA合成酵素領域の塩基配列を決定、分子系統解析を行ったところ、ソラマメ2本鎖RNAよりもイネ2本鎖RNAと塩基配列の相同性が高いという結果が得られた。このことから、現在では水平伝播(感染)能を失い垂直(種子)伝播能しか持たないと思われる高分子2本鎖RNAレプリコンも、かつてはRNAウイルスのように水平伝播能を有していたことが示唆された。 多くの植物病原菌にも2本鎖RNAが検出される。紫紋羽病菌(Helicobasidium monpa) V1369株の2本鎖RNAの一部塩基配列を決定したところ、イネ2本鎖RNAと相同な配列を有していた。すなわち、高分子2本鎖RNAレプリコン(Endornavirus)は、植物のみならず菌類にも分布する広範囲な宿主域を持つRNAレプリコンであることが示された。また、Alternalia alternata FGSC35193株に存在する2本鎖RNAの部分配列を決定したが、既知のRNAウイルスや2本鎖RNAレプリコン(Endornavirus)とは相同性を示さず、新規なRNAレプリコンである可能性が示唆された。 このような高分子2本鎖RNAレプリコンをウイルスの新たな科(Endoviridae)、属(Endornavirus)に分類することを、International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV)に申請していたが、属(Endornavirus)については承認され、科(Endoviridae)については保留された。研究成果をさらに蓄積し、科(Endoviridae)について再申請したい。
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