研究課題
高分子2本鎖RNAレプリコンは、種々の植物から検出されるが、イネとソラマメの2本鎖RNA以外は、塩基配列すら明らかにされていない。本年度は、インゲンマメ、オオムギ、ヒョウタン、メロン、ツルムラサキ、アマモから、高分子2本鎖RNAを単離しRNA依存RNA合成酵素領域をクローニングし、塩基配列を決定、分子系統解析を行った。その結果、これら2本鎖RNAは、イネ、ソラマメ2本鎖RNAの配列と相同性が高く、一つのグループ(Endornavirus属)を形成することから、Endornavirusは、単子葉、双子葉を問わず植物に広く存在するRNAレプリコンであることが示された。また、宿主植物の系統関係と2本鎖RNAの系統関係が一致せず、現在では垂直(種子)伝播能しか持たないと思われる高分子2本鎖RNAレプリコンも、かつてはウイルスのように水平伝播能を有していたことが示唆された。また、宿主植物細胞には、プラスミド様2本鎖RNAレプリコンの増殖(複製)を制御する因子が存在し、この機構はジーンサイレンシング機構と共通すると推測した。宿主因子の候補として2本鎖RNA結合モチーフ(dsRBM)を含む2本鎖RNA結合タンパク質を想定し、シロイヌナズナから14種のdsRBMを含むタンパク質を見出した。この中で、N末端に2つのdsRBMを含むDRB1、DRB2,DRB4,DRB5、ダイサー様タンパク質DCL1〜4等、計10種のタンパク質についてリコンビナントタンパク質を用いて生化学的に解析した。その結果、6種について2本鎖RNA特異的結合活性を確認し、これらのタンパク質が、dsRBMを介してお互いに相互作用すること等が明らかとなった。今後、2本鎖RNA結合タンパク質とジーンサイレンシング(RNAレプリコン制御)機構との関連を研究してゆきたい。
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