研究課題
基盤研究(B)
高分子2本鎖RNAレプリコンは、種々の植物から検出されるが、イネとソラマメの2本鎖RNA以外は、塩基配列すら明らかにされていない。インゲンマメ、オオムギ、ヒョウタン、メロン、ツルムラサキ、アマモ、および植物病原菌である紫紋羽病菌(Helicobasidium monpa)から、高分子2本鎖RNAを単離しRNA依存RNA合成酵素領域をクローニングし、塩基配列を決定、分子系統解析を行った。その結果、これら2本鎖RNAは、イネ、ソラマメ2本鎖RNAの配列と相同性が高く、一つのグループ(Endornavirus属)を形成することから、Endornavirusは、植物および菌類に広く存在するRNAレプリコンであることが示された。また、宿主植物の系統関係と2本鎖RNAの系統関係が一致せず、現在では垂直(種子)伝播能しか持たないと思われる高分子2本鎖RNAレプリコンも、かつてはウイルスのように水平伝播能を有していたことが示唆された。また、イネ培養細胞を用いて、2本鎖RNAレプリコンを保持する細胞と保持しない細胞で総タンパク質の比較を行った。これらの細胞間でタンパク質に差がみられ2本鎖RNAレプリコンの複製を助ける宿主因子である可能性が示唆された。具体的な宿主因子の候補として2本鎖RNA結合モチーフ(dsRBM)を含む2本鎖RNA結合タンパク質を想定し、シロイヌナズナから16種のdsRBMを含むタンパク質を見出した。この中で、N末端に2つのdsRBMを含むDRB1、DRB2,DRB4,DRB5、ダイサー様タンパク質DCL1〜4等、計8種のタンパク質についてリコンビナントタンパク質を用いて生化学的に解析した。その結果、6種について2本鎖RNA特異的結合活性を確認し、これらのタンパク質が、dsRBMを介してお互いに相互作用すること等が明らかとなった。宿主細胞による2本鎖RNAレプリコンの制御機構と、ジーンサイレンシング機構との共通性について議論した。
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