研究概要 |
本研究では、廃水処理分野における窒素除去への技術的対策の一つとして生分解性ポリマーを電子供給源として利用する固相脱窒法の適用を考え、これまでポリヒドロキシ酪酸とポリヒドロキシ吉草酸の共重合体であるPHBVを電子供与体とする固相脱窒プロセスを中心に実験を行ってきた。本年度は、この研究によって新たに分離された親属新種Diaphorobacter nitroreducensを利用してPHBVを基質とする連続培養固相脱窒プロセスを構築し、このプロセスの脱窒能力について検討した。段階的に硝酸負荷速度を上げながら連続培養を行った結果、負荷量の増加に対応して脱窒速度が上昇することが認められた。これらのデータを動力学的に解析した結果、硝酸負荷速度27mg NO_3-N/L/hで、V_<max>=19mg NO_3N/g dry wt/h,K_s=15mg/Lが得られた。これらの値は、活性汚泥を馴養して構築されたPHBV系脱窒プロセスの値と類似した。PHBV系固相脱窒プロセスでは、基質であるPHBVの製造コストが高い欠点があるため、より安価なポリ-ε-カプロラクトン(PCL)を使って固相脱窒プロセスを構築することを試みた。活性汚泥を接種源としてPCL馴養脱窒プロセスを構築した結果、PHBV系の約半分の脱窒速度が得られた。PCL系プロセズの群集構造をFISH法、キノンプロファイル法、および分離培養株の解析によって調べた結果、PHBV系とは異なり、アルファプロテオバクテリアとベータプロテオバクテリアが共存して優占化していることが示された。分離株の一部はParacoccusなどの既存の菌に同定されたが、多くはベータプロテオバクテリアであるComomasnas属の新種であることが示された。
|