平成15年度は高校生を被験者として行い結果を分析するとともに、前年度に行った18〜25歳の青年層を対象とする結果と比較検討した。試験調査は前年度同じく、福岡県八女郡黒木町笠原地区の農林地及び農林業体験交流施設「四季菜館」を宿泊拠点とし、調査条件も同様とした。いずれも40人の募集定員に対して、「日帰りコース」40名、「1泊2日コース」18名、「2泊3日コース」25名の応募となったことから、それぞれ半数ずつを、スギ・ヒノキ林の間伐のみの「単一作業」グループと、これに稲刈りや間伐材を活用した山道の階段工を組合わせた「複合作業」グループに区分して行った。 いずれのグループも、一連の体験作業のプログラムの開始と終了時にアンケート調査を行った結果、体験時間や作業内容の差異にかかわらず、過半数の被験者がプログラムに参加したことや農林作業を体験したことに満足し、また、農林業や農山村の景観に対する認識が深まることや、変化することが明らかとなった。さらに、体験時間が長くなるほど、より農山村や農林業に対する興味やこだわりを持つ傾向が見られ、また、滞在期間を長いとも感じないことが分かった。また、単一作業よりも、複合作業の方が疲労感の少ないことや農林業に対する興味がより高まる傾向が見られた。一方、青年層と高校生では以上の点に大きな差異はなかったが、高校生のほうが体力や興味の持続の点で、やや幼い傾向が観察された。 本研究の結果から、農林作業を体験し、現場で生の情報に接することによって、青少年の農山村環境や農林業に対する認識が高まることや、他人との連帯を感じる喜びを得ること、今後の保全活動への参加意欲等も高まることなどが把握できた。このような農林体験プログラムを大学及び高校教育へどのように応用するのか、また、NGOの協力による支援・遂行システムのあり方等が、今後の課題として残された。さらに、中学生や小学生高学年への体験教育としての可能性、ならびに、その際の作業内容及び時間配分の適切性についても、追加の試験調査が必要と考えられた。
|