平成14年度は大学生を主とする18〜25歳の青年層を、平成15年度は高校生を被験者として試験調査を行い、それぞれの結果を分析するとともに、相互に比較検討した。試験調査はいずれも福岡県八女郡黒木町笠原地区の農林地及び農林業体験交流施設「四季菜館」を宿泊拠点とした。調査条件は共に、体験期間の異なる、「日帰りコース」、「1泊2日コース」、「2泊3日コース」の3条件で、被験者と日にちを違えて行った。また、実施に際してはいずれのコースとも、それぞれ半数ずつを、スギ・ヒノキ林の間伐のみの「単一作業」グループと、間伐に稲刈りや間伐材を用いた山道の階段工等を組合わせた「複合作業」グループに区分して行った。 全ての被験者に対して、一連の体験作業プログラムの開始時と終了時にアンケート調査を行った結果、年齢層や体験時間、作業内容の差異にかかわらず、ほとんど全ての被験者が、このプログラムに参加したことや農林作業を体験したことに満足し、また、農林業や農山村の景観に対する認識が深まることや、考え方が変化することが明らかとなった。未知の参加者とごく自然に会話し、友達になれたとの回答も多数見られた。体験時間が長いほど、より農山村や農林業に対する興味やこだわりを持つ傾向が見られ、また、滞在期間を長いと感じなくなることも分かった。さらに、単一作業よりも、複合作業の方が疲労感の少ないことや農林業に対する興味がより高まる傾向が見られた。一方、青年層と高校生では以上の点に大きな差異はなかったが、高校生のほうが体力や興味の持続の点で、やや幼い傾向が観察された。 本研究の結果から、農林作業を体験し、現場で生の情報に接することによって、青少年の農山村環境や農林業に対する認識が高まることや、他人との連帯を感じる喜びを得ること、今後の保全活動への参加意欲等も高まることなどが把握できた。このような農林体験プログラムを大学及び高校教育へどのように応用するのか、また、NGOの協力による支援・遂行システムのあり方等が、今後の課題として残された。さらに、中学生や小学生高学年への体験教育としての可能性、ならびに、その際の作業内容及び時間配分の適切性についても、追加の試験調査が必要と考えられた。
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