研究概要 |
水道水質汚染リスクの事後的リスクマネジメントの可能性についての検討を引き続き行った.水道水質汚染リスクの事後的マネジメントとしては,補助金によるリスク分担制度を援用できる可能性が高いとの考察結果が得られた.ただし,常に指摘されるように,補助金制度による資源配分の歪みも無視し得ない問題であることから,市場メカニズムによる効率性を享受することのできる保険制度の適用可能性と包括的な比較検討を行った上での選択であることが前提として必要である. さらに、本研究で対象とした都市域の水環境汚染リスクの事例としてバングラデシュを対象とした分析を行つた。バングラデシュでは、国民の43%はトイレを持たず、この国で普及が進められているタイプのトイレも衛生面での問題を有している。開発途上国の住民が主体的にトイレを普及し、し尿を衛生的に処理していくためには、住民が受入れ可能な技術とその導入の方法論を明らかにする必要がある。バングラデシュ都市住民がトイレ、し尿処理、ならびにこれらを含めた衛生、生活全般に関して抱いている意識を直接インタビュー形式の調査により把握し、衛生改善技術を導入するにあたっての要件について考察した。 バングラデシュ政府,国際援助機関などの取り組みにもかかわらず,同国の飲料水のヒ素問題は.発見(1993年)から10年以上を経過した今でも多大な課題を抱えており,安全な飲料水供給の遅れに住民の不満が広がっている.遅れの背景には,対策の実施に必要な体制の欠如や人材の不足などもあるが,援助の送り手と受けての問でのコミュニケーション不足に起因する問題も見られる.そこで、住民アンケート調査を用い,バングラデシュの人達がヒ素問題とどのように向き合っているかをコミュニティの視点で明らかにすることを試みた.
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