腎臓で生成され赤血球造血系にのみ作用するとされてきたエリスロポエチン(EPO)について、申請者は脳、子宮における生産を発見した。そして、脳EPOは、虚血時の神経細胞死を抑制する効果があることを証明した。この発見は他の研究室の研究により広く支持されており、EPOを脳梗塞の治療に使用する臨床実験が行われ、顕著な治療効果が報告されている。さらに申請者は、雄性生殖器官に予期せぬ生産部位が存在することを発見した。子宮のおけるEPOは、性周期に伴う子宮内膜層の肥厚の際に起こる血管新生に関与することを明らかにしてきた。 他方、トリプトファンからNADを合成する経路の中間代謝産物であるキノリン酸(QA)がEPOの生合成を抑制することが報告された。QAは腎不全の血液中に蓄積することが知られており、QAがEPO生合成を阻害することは、QAが腎性貧血を引き起こす原因物資であることを示唆する重要な発見である。そこで、QAの代謝酵素であるキノリン酸ホスホリボシルトランスフェラーゼ(QPRT)遺伝子を除去したマウスの作成を開始した。もし、腎不全によりQAが蓄積し、蓄積したQAがEPOの生産を阻害するとする仮説が正しければ、QPRT遺伝子除去マウスでは、QAが蓄積し、EPO生産が阻害される結果、貧血や生殖器官の異常が観察されることが期待される。まず、QPRT遺伝子の構造を明らかにし、ターゲティングベクターを構築し、QPRT遺伝子を除去したマウスES細胞を作成し、キメラマウスの作成中である。
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