研究概要 |
マウスES細胞が肝細胞にin vitroで分化し得ることを明らかにした。とくに、肝臓の発生分化に深く関わる転写因子hepatocyte nuclear factor 3 beta(HNF3β)を遺伝子導入したHNF3β導入ES細胞では、キチンファイバーを添加することにより、スフェロイド状態で細胞増殖が維持され、かつ、アルブミン産生能、尿素合成能、脂肪酸合成能も長期間維持されることが判明した。さらに、HNF3β導入ES細胞は、5日間のhanging drop法による胚様体形成後にステロイド、インスリンおよびニコチナマイドなどを含む肝細胞分化促進培養液にて付着培養すると、付着培養開始2日目にはほぼ全細胞が免疫染色にてアルブミン陽性となった。すなわち、HNF3β導入ES細胞は分化誘導開始7日でアルブミン産生細胞に分化誘導可能であった。さらに、このHNF3β導入ES細胞の肝細胞分化過程で、アニオントランスポーター(oatp1.multidrug resistance-associated proteins(mrp1,mrp2,mrp3),uridine diphosphate glucuronosyltransferase(ugt1a1)を発現し、 oatp1はデスモプラキンと、 mrp2はCD26と共在した。マウスES細胞由来肝細胞は、移植目的の細胞源としてのみならず、基礎研究における代替肝細胞としての使用も期待されることが判明した。
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