研究概要 |
1.温度傾斜型制御温室TGCの製作と水稲の水ストレス分光測定実験 初年度の水稲育成測定実験のために温度傾斜型制御温室TGCを島根大学生物資源教育研究センター内に急ぎ建設した.要する工事期間のため水稲をやや遅く移植したが,コンクリート灰汁・微量元素等の土壌生育条件が整わず正常な生育でなかった.しかし,水ストレス測定帯(1.6μmと2.2μm付近)である短波長赤外・可視分光放射計を用いた測定実験により分光データが得られ,水稲に関する水ストレス指標のモデル化の方針を立てることができた. 2.穀物生産指標のモデル化 光合成型の穀物生産指標のモデル化を進めた.作物の成長と穀物生産の源となる光合成を推定するためには,日射の他に作物の気孔からの蒸散を適切に考慮する必要がある.シミュレーションに代わってリモートセンシングを用いて作物の成長を測定することにより,生育は既知として光合成速度を推定する.穀物生産量の推定は基本的に光合成速度の積分値に依存し,その光合成は日射と作物現存量の他に気孔開度に依存すると考えた.なお,作物が生育したとしても不稔温度と高温障害という植物生理学的要素があるため,穀物生産指標の中に光合成の他に出穂・登熟のための気温障害の要因も取り入れている. 地球温暖化の現代では,穀物生産量におよぼすCO_2濃度の影響も多くの研究がある.しかし,穀物生産の現況追跡の場合には,その現況監視の前後には,大気中に供給量が十分あるとして不変とし,CO_2濃度の影響は穀物生産指標中に考慮しない.また,肥料の効果は植生現存量を表す植生指標NDVIに反映されるとする.同様に,病虫害は植生指標NDVIに現れるとして無視する.このモデル化を第6回水資源シンポジウムとシステム農学会で発表した.
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