研究概要 |
1.制御温室TGCによる水稲の水ストレス分光測定実験 初年度に島根大学生物資源教育研究センター内に建設した温度傾斜型制御温室TGCを使用して葉のスペクトル観測用の水稲を育成した.生育した水稲の灌漑水を抑制することによって人為的に水ストレスを与えた.蒸散の減少による葉温の上昇を観測すると共に,葉の持つ可視・短波長赤外光について反射率スペクトル値が上昇する量を計測した.分光反射率はASD社製のField Spec FRの分光放射計を使用し,測定範囲は350μm〜2500μmである.この観測時間内の薄雲の通過によって短波長赤外帯の反射率値が大きく変動する.しかし,近赤外の波長帯は水の吸収帯では無いため,近赤外の反射率は測定時間内に同一とみなすことができる.波長0.725μmから1.100μmの反射率の平均値で各反射率値を割った反射率比によって反射率スペクトルを標準化し,薄雲の影響を除いた.水ストレスが作用することによって水扮が減少するに伴い反射率が上昇する関係が得られた. 2.光合成型穀物生産指標のモデリング 従来からの有効積算気温や植生現存量ばかりでなく,世界気象データと衛星による植生指標を用い,日射・有効気温・植生現存量・気孔開度を考慮した光合成型の穀物生産指標をモデル化することによって,水資源不足時代における穀物生産量を早期に監視する方法を提案した.小麦・米・トウモロコシ等の穀物生産量の中で水稲を最も重視した.水稲は食糧問題の中で単位面積当たりの収穫量が小麦より高いことから人口扶養力が大きく,また,水資源を最も多く必要とし,水配分の視点から重要な作物となっているからである.この穀物生産指標を土木学会環境システム論文集に発表した.また,低温不稔・高温障害を表す温度障害項とによって穀物生産指標のモデリングを進め,システム農学会2003年度春季研究発表会や水文・水資源学会2003年研究発表会,更に第216回日本作物学会講演会で発表した.
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