大気中有害化学物質に対する遺伝的感受性要因の抽出法の確立

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14390058
• 研究機関: 独立行政法人国立環境研究所
• 研究代表者: 平野 靖史郎 国立環境研究所, 環境健康研究領域, 室長 (20150162)
• 研究分担者: 崔 星 国立環境研究所, 環境健康研究領域, 研究員 (20342735)
• キーワード: 肺胞II型上皮細胞 / 内皮細胞 / cDNAアレー / ヘムオキシゲナーゼ / 抗酸化酵素 / 感受性 / 粒子状物質 / 砒素

研究概要

肺胞マクロファージ、あるいは肺胞II型上皮細胞の培養系に、ディーゼル排気粒子の有機抽出物を添加した後、細胞よりRNAを抽出して、cDNAアレー法を用いて発現が変化した遺伝子群のスクリーニングを行なった。発現が上昇した遺伝子は、ヘムオキシゲナーゼ-1、チオレドキシンパーオキシダーゼ、グルタチオンSトランフフェラーゼなど、主として抗酸化系酵素の遺伝子であり、ディーゼル排気粒子抽出物が肺において、マクロファージや上皮細胞に強い酸化的ストレスを与えていることが示唆された。また、ディーゼル排気粒子、あるいは都市大気粒子の抽出物を曝露した微小循環内皮細胞において、抗酸化酵素の一種であるヘムオキシゲナーゼ-1の遺伝子発現上昇が見られることをノーザンハイブリダイゼイション法により明らかにした。用量影響関係より、ディーゼル排気粒子抽出物は都市大気粒子抽出物より強いヘムオキシゲナーゼ-1の誘導能をもつことが示唆された。また、この上昇は抗酸化剤であるN-アセチルシステインにより抑制されることにより、内皮細胞に於いても上皮細胞と同様に、粒子状物質の抽出物が酸化的ストレスにより細胞障害を起こす可能性を示した。
また、本年度、感受性要因をin vivo実験において調べるのための予備的研究を行なった。重金属化合物などに対して高感受性であることが知られているA/Jマウスと、抵抗性であるC57BL/6JマウスとのF_1マウスを作製して、それぞれの系統の遺伝的バックグラウンドを調べる準備を始めている。

研究成果

• [文献書誌] E.Koike, S.Hirano, N.Shimojo, T.Kobayashi: "cDNA microarray analysis of gene expression in rat alveolar macrophages in response to prganic extract of diesel exhaust particles"Toxicol. Sci. 67. 241-246 (2002)
• [文献書誌] R.Hataishi, H.Kobayashi, Y.Takahashi, S.Hirano, W.M.Zapol, R.C.Jones: "Myeloperoxidase associated tyrosine nitration after intratracheal administration in rats"Anestheology. 97. 887-895 (2002)
• [文献書誌] S.Hirano, C.D.Anuradha, S.Kanno: "Krox-20/egr-2 is up-regulated following non-specific and homophilic adhesion in rat alveolar macrophages"Immunology. 107. 86-92 (2002)
• [文献書誌] S.Hirano, X.Cui, S.Li, S.Kanno, Y.Kobayashi, T.Hayakawa, A.Shraim: "The Difference in Uptake and Toxicity of Trivalent and Pentavalent Inorganic Arsenics in Rat Heart Microvessel Endothelial Cells"Arch. Toxicol.. (in press). (2003)
• [文献書誌] S.Hirano, Akiko Furuyama, E.Koike, T.Kobayashi: "Oxidative-Stress Potency of Organic Extracts of Diesel Exhaust and Urban Fine Particles in Rat Heart Microvessel Endothelial Cells"Toxicolgy. (in press). (2003)