研究課題
高いレベルの音楽的な音列(フレーズ)に対する知覚認知時の脳内血流分布の変化を観察できるような刺激システムを開発し、これを用いた時の健常者の「音楽」に対するリズム、ピッチ、音色の処理に機能分布を比較することを目的とする。高磁場中で良好な音質で音楽フレーズ刺激を提供するだけでなく、被験者が課題実施した際のパフォーマンス(正答率および反応時間)をモニターするためのスイッチ動作を記録する機能をもたせた音楽刺激装置を開発し、これにより音楽を理解する高次脳機能メカニズムの解明を目指した。音楽演奏時の脳機能をPETて観察するパラダイム設計の前段階として受動的に音楽フレーズを拝聴した時のリズム、音色、音強、ピッチの4つの認知に関する機能局在をfMRIを使って決定するための刺激パラダイムを作成し、音楽家、非音楽家合わせて17名を対象にfMRI検査を実施したた。前例において課題の正答率は67%であり全てのタスクの実施を確認した。統計解析の結果、音楽家および非音楽家共に安静時に対する課題実行時において、両側一次聴覚野領域、左ウェルニッケ領域・左運動野領域・補足運動野、ブローカ領域、右前頭葉領域に賦活を認めた。音楽家群においては、上側頭回領域の賦活は非音楽家と比べて広く分布していた。このようにMRI装置内で音楽認知時の高次脳機能の観察は可能であり、音楽の構成要素のうちリズム、ピッチ、音色に関する機能領域を特定できると考えられた。但し音楽家と非音楽家とではその分布の大きな違いが認められ、教育あるいは訓練によって認知ネットワークが異なることが示唆された。一方、頭部の動きをリアルタイムでモニターし、PET検査中の頭部の動きを補正するシステムの開発に成功し、実際にピアノ演奏中のPET画像撮像に成功した。現在は、PET検査における体動補整が高次脳機能に与える効果を客観的に評価するためのパラダイム設計を構築している。