研究課題
PETやfMRIを用いて脳腑活時の脳内機能分布を非侵襲的に観察することができる。fMRI計測は局所の神経活動に基づく酸素代謝量と血流量との反応が非線形であることに基づいているが、一方PETでは血流量と酸素代謝量とを同時に観察することができる。血流量と酸素代謝量にはtightなcouplingを有する病態(脳虚血など)が存在する一方、脳腑活時にはそれぞれ独立なメカニズムに基づきweekなcouplingあるいは全くcoupleせずに変化していた。当該研究では、脳血流量と酸素代謝量との変化の生理学的な背景を明らかにし、一方高いレベルの音楽的な音列(フレーズ)に対する知覚認知時の脳内分布についての調査を実施した。また、機能的な連携と形態的な連携についての基盤情報の収集も行った。またドーパミン作用性ニューロンの連絡のイメージングにも成功した。音楽的な音列(フレーズ)認知時の脳内血流分布の変化を観察できるような刺激システムを開発し、これを用いた時の健常者の「音楽」に対するリズム、ピッチ、音色の処理に機能分布を比較した。音楽家、非音楽家合わせて計17名を対象に統計解析の結果、安静時に対する課題実行時において、音楽家および非音楽家の両郡間で異なる賦活領域を確認した。リズム刺激に対して、両郡で左半球上側頭回上部に共通の賦活を認め、これは内的時間処理の局在領域と考えられた。また同リズム刺激においては、音楽家群では前頭前野の言語領域において有意な賦活を認めた。音程刺激に対しては、音楽家群では頭頂連合野領域に有意な賦活を認め、これは全ての音楽家被験者が課題達成のために音符を思いうかべて処理をおこなっていたことを反映するものと推測された。音楽家群では右半球における左運動野領域および視覚野領域において有意な灰白室領域の肥大を認めた。このようにMRI装置内で音楽認知時の高次脳機能の観察は可能であり、音楽の構成要素のうちリズム、ピッチ、音色に関する機能領域を特定できると考えられた。音楽家と非音楽家とではその分布の大きな違いが認められ、教育あるいは訓練によって認知ネットワークが変化することを、fMRIの手法で観察できることが確認できた。また、MRIを用いた白質の繊維走行(tractography)を高精度で画像化し、線状体の各セグメントと前頭前野との連係のイメージング法が構築できた。
すべて 2005
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