本年度は、昨年度の概況調査の基礎のもとに、研究代表者の瀬川が11月に海南島西北部の〓州市で地方文化の情況についての調査を行った。調査地域は、〓州市中和鎮小高地村、同鎮霊春村、〓州市光村鎮泊潮村、〓州市三都鎮顔塘下村、〓州市洋浦港区夏蘭村である。小高地村では、十数家族の家族構成と家庭内使用言語、通婚関係などについて詳細なデータを収集し、軍話、村話等の多方言使用的な状況と異方言話者グループ間の通婚関係などを具体的に把握することができた。また、霊春村では方言使用状況、宗族活動、隣村との械闘などについての情報を得た。また臨高県との協会部に位置する漁村・泊潮村では、臨高県との交流状況、使用方言などについて調査した。また顔塘下村では昨年度概況調査の際に訪問した日本軍政時代の通訳をした老人を再訪問し、そのライフヒストリーを収集するとともに、同村の羊氏一族の族譜を閲覧する機会を得た。また工業開発区内に組み入れられた漁村・夏蘭村では、伝統的な祭祀儀礼や宗族活動とその現在的な変化について情報を得た。さらに、地方志をはじめとする海南島関連の文献資料を収集、閲覧し、同島の地方文化について考察するための知識の獲得に務めた。 本年度の実地調査では、通訳並びに資料収集補助のために雇用した現地スタッフの協力のもとに、収集された資料は膨大であるが、その大部分は現在までのところ未整理となっている。来年度は、現地スタッフの協力のもとにこれまでのデータを整理分析し、報告書を完成させる予定である。
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