本年度は、3か月にわたって現地に滞在し、トゥビゴン村カハヤグにあるカハヤグ協同組合について、インタビュー調査や統計資料の調査を行い、政治過程分析、財務分析、および世帯戦略分析を行った。その結果、次のような事実が明らかとなった。 (1)協同組合のリーダーシップと村落の政治プロセスは、軌を一にしている。 (2)協同組合の経済活動の主軸は農民に対する小口信用活動にあるが、1989年に設立された協同組合は、その設立当初から融資の焦げ付きと言う現実に直面する他、協同組合従業員もまたつけ払いや使い込みなどで資金を流用して行った。 (3)協同組合は財務レバレッジが高いため、実質的に政府や政府系銀行の資金を農村に流し込むパイプの役割をはたしていたが、そのお金は農民の生産投資には使われず、そのまま使い込まれて行った。 (4)このように協同組合の融資はその多くが未返済のまま焦げ付いて行ったが、それは組合員や従業員に倫理観が欠如しているからではなく、むしろ協同組合の経済戦略が組合員である農民たちの世帯生計戦略と一致していないために起きた、構造的な問題である。 以上のようなカハヤグ協同組合の問題は、この地方の協同組合全体に見られる問題でり、そこにはマレー的な政治構造や所有構造といつた歴史的特徴も色濃く見られるものであり、農村の協同組合を地域の社会構造と関連づけて理解する必要がある。そのためにはまず、こうした関連付けを保証する理論的枠組みを確立する必要があるが、それには所有関係を手がかりにすると望ましいのではないかと言う展望が得られた。
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