本研究は、初年度にあたる平成14年度からコートディヴォワール共和国での現地聞きとり調査を予定していたが、平成14年9月以降、同国の政情不安が内戦へと悪化してしまい、平成14年度については当初の渡航予定を断念せざるをえない状況となった。そのための次善策として、本研究代表者は平成14年12月より平成15年2月にかけてセネガル共和国およびマリ共和国(ただし後者は1週間のみ)に渡航し、旧仏領西アフリカの統治体制をめぐる補足調査から着手することになった。具体的に、セネガル共和国では20世紀転換期に領内の内陸各地に設置された「自由の村」をめぐる現地調査、および同国西部・北部モーリタニア国境部のバケル市、マタム市、ポドール市に残存するフランス植民地軍駐屯地跡と地域住民との史的関係をめぐる調査のほか、セネガル国立公文書館においてフランス共和政体の西アフリカ村落統治への影響度をはかる文献調査に従事した。またマリ共和国では、人種分離政策の一環として旧仏領西アフリカの都市部に設置された「黒人居住区」の成立史に関する短期文献調査を試みた。 だが他方において本研究は、本研究代表者にとってすでに研究蓄積のあるコートディヴォワール共和国ダナネ県内でのダン語話者を対象とする聞きとり調査にもっぱらその主眼が置かれている以上、かりに次年度以降も同国における内戦状態が継続・膠着化した場合には本研究課題の遂行にとり深刻な諸問題の出来が予想され、現状においては課題内容の抜本的な変更を余儀なくされる可能性も視野に入れつつ、同国政情の推移を見守っている状況にある。
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