研究概要 |
(1)平成14年度は,東西アフリカにおける救済ならびに宗教的救済のあり方の比較研究を念頭にいれながら,まず西アフリカ諸都市での救済のあり方に絞って,研究を進めた。特に,カメルーン,ギニア,ガーナの諸都市における宗教的救済のあり様を調査した。ここで,現代都市(コナクリ)と伝統都市(クマシおよびフンバン)の比較を試みた。これについては,鈴木裕之教授の「『神』を歌うアルファ・ブロンディ」と阿久津昌三助教授の「アサンテにおける王の葬儀と寡婦儀礼」,そして和崎春日の「アフリカ伝統都市における異質包摂と救済の論理」にまとめた(報告書『現代アフリカ社会における宗教的救済の都市人類学的研究』平成18年3月刊所収)。また,日本における王権に関わる都市社会での宗教的救済のシステムとの比較を強く視野に入れて,カメルーンでは王権都市における救済のあり様を研究・調査した。この日本一アフリカのそれぞれにおける王権都市での宗教的救済の比較分析については,分担者・阿部泰郎教授が「伊勢に参る聖と王」としてまとめた(報告書『同』所収)。 (2)平成15年度,2年目に入って,初年度に調査したカメルーン伝統都市での救済のあり方を,相対化してここから発展させるべく,カメルーン現代都市における救済のあり方を調査するべく,カメルーン伝統都市の調査を継続させつつ,カメルーン首都ヤウンデでの救済のあり方を調査した。ここでは,伝統的かつ宗教的な救済の方法に加えて,現代的な福祉による救済が現実的に意味を持つ場合を深く掘り下げることができた。ここでの,伝統装置にもよらず,国家にもよらない救済のあり方については,分担者・田淵六郎助教授の「カメルーン都市域における相互扶助と社会福祉」(報告書『同』)において詳しく報告した。 (3)最終年度の平成16年度は,旧イギリス植民地都市と旧フランス植民地都市とにおける宗教的救済のあり方を比較し,同時に東西アフリカでの宗教的救済のあり方を比較するべく,過去2年間で行わなかった東アフリカ・スワヒリ都市調査を始めて実施し,ここでの宗教的救済のあり方を,スワヒリ都市人類学の第1人者である日野舜也教授を中心に嶋田教授と和崎主査も帯同して集中調査した。ここでの宗教的救済のあり方については,分担者・日野教授が「神にすべてを委ねる:東アフリカウジジにおけるスワヒリ民の宗教意識」(報告書『同』)において詳しく報告した。こうして,アフリカ伝統都市と現代都市,東西アフリカ都市における救済の総合比較の考察を行った。
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