研究概要 |
1.敦煌研究院、敦煌市博物館など地元敦煌の所蔵機関において敦煌出土漢文文献の閲覧・調査を行ない、約20点の文献を対象とすることができた.これら文献はいずれも5〜10世紀に書写されたもので大半は写経である.異体字や別字の使用状況,避諱の有無、朱筆の使用,紙の貼り継ぎ方などの諸点に留意しながら閲覧を行なった.また文献が出土した敦煌莫高窟ならびにそれと同時代の西千仏洞の参観も行なった. 2.西安の西北大学図書館では4点の敦煌文献を閲覧できた.また全所蔵点数が6点であることも確認した.いずれも写経だが,入手した経緯やそれに関わる真贋の問題について副館長と意見交換を行なった.西安の諸機関のうち敦煌文献を収蔵しているのは西北大学図書館と陝西師範大学図書館だけで,陝西省博物館や陝西省図書館には所蔵されていないことも確認できた.従って陝西省博物館に所蔵されているという従来の説は再検討を迫られることになる. 3.西安の陝西省博物館・碑林・陝西省考古研究所などでは,敦煌文献と同時代の石刻資料を閲覧した.とくに異体字や別字の使用状況,書体・書風について手がかりを得るためである.最後の考古研究所では壁画など非文字資料も参観し,莫高窟の壁画や同じ敦煌仏爺廟湾の魏晋墓から出土した画像磚などとの比較対照の可能性についてもあわせて検討した.とくに魏晋墓は莫高窟の技術的・社会的な前提を用意したと言うことができる.
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