研究課題/領域番号 |
14401028
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
高橋 隆博 関西大学, 文学部, 教授 (70188019)
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研究分担者 |
木庭 元晴 関西大学, 文学部, 教授 (40141949)
高橋 誠一 関西大学, 文学部, 教授 (00025082)
山岡 泰造 関西大学, 文学部, 教授 (50067576)
中谷 伸生 関西大学, 文学部, 教授 (90247891)
薮田 貫 関西大学, 文学部, 教授 (80027987)
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キーワード | インド共和国 / 都市遺跡 / シュラーヴァスティー遺跡群 / サヘート(祇園精舎)遺跡 / マヘート(舎衛城)遺跡 / ラープティー川 / 周濠と城壁 / 骨器製作 |
研究概要 |
平成15年度は、遺跡現地での地形確認を目的とした踏査、及び現地収蔵庫に保管する既往発掘調査で出土した遺物の整理作業を重点的に実施しました。 踏査は遺跡周辺衛星写真をもとに、地形の確認作業を実施しました。その結果、ラープティー川の旧河床・氾濫原が展開し、その南西側に広がる微高地末端に遺跡が立地することを確認しました。ただし、遺跡の南・西側にも微高地・低地部が点在しており、遺跡は安定した微高地上に立地することが判明しました。また、城壁は微高地縁辺に周濠をめぐらし、その内側に周濠掘削土を盛上・造成している見解を補強しました。これらから、当該遺跡の都市形成過程では河川の氾濫を回避しやすい場所の選地と同時に、周濠の掘削・城壁の造営による治水も意図していたことが推測できました。 一方、出土遺物の整理は、ビハール州パトナー支局で保管されている登録出土遺物とは別に、現地保管の登録外出土遺物である動物骨を中心に整理作業を実施しました。これらの動物骨は遺跡北部の太陽の池南側に位置するA地区から大量(総重量約30kg)に出土しました。整理作業の結果、動物骨にはウシ科と推定される大型動物や中型動物(イノシシあるいはブタか)、小型動物(ネズミか)が含まれることが判明しました。特に大型動物の肢骨には人為的な切断痕・加工痕が看取でき、骨器製作の一端を確認しました。骨器製作は調査区内の最下層に近い段階(前6世紀頃)から行なわれていたと推定できますが,この地域では若干新しい時期(前4〜3世紀頃)に開始された鉄器や貴石製玉、ガラス製小玉などの各種工芸品の生産に先行する時期から工房に関連する地域であり、工房の運営・変遷の過程で主たる製作品目が変化した実態を把握しました。このように今年度の整理作業の成果から、都市形成過程の考究上で重要な指標となる、工芸品生産の様態の解明に手掛りを得ることができました。
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