研究分担者 |
黒木 英光 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20195580)
近藤 信彰 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 助教授 (90274993)
中田 考 同志社大学, 神学部, 教授 (40274146)
山岸 智子 明治大学, 政治経済学部, 助教授 (50272480)
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研究概要 |
本研究の主な目的は,1990年代半ば以降のイスラーム世界におけるジハード理論の変容,具体的には「防衛ジハード」の戦場を米国本土にまで広げ,一般市民をも攻撃対象とするウサーマ・ビンラーディン独自の理論が受け入れられた過程と,この理論を実践しようとする諸組織の実態について体系的な分析を行うことにある。この目的を達するため,過去3年間はそれぞれ中央アジア、中東、東南アジアを重点的に調査してきたが,最終年度にあたる本年度は南アジアのムスリムを重点調査対象とし,研究代表者と研究分担者1名がインド・パキスタンで現地調査を行った。両国では,スンナ派の現代ジハード理論に関する資料収集と聞き取り調査、また特に南インドに多いシーア派の現代ジハード理論について聞き取り調査を行ったが,そこで明らかになったのは,特に2001年9月の米国同時多発テロ事件以降欧米や中東のムスリムの間で論じられ,強く意識もされてきたいわゆる"ISLAMAPHOBIA"(地球規模でのムスリムに対する差別・迫害)現象がアフガニスタン戦争、イラク戦争を経て南アジアのムスリムにもまた深刻な問題として意識され,この差別・迫害に対する抵抗・対抗手段として,ウサーマ・ビンラーディン型のジハードを支持する傾向がますます強くなりつつある事実であった。パキスタンのイスラーム運動指導者の話では、2005年にラホールで開かれたグローバルなイスラーム政治運動の国際会議でも、この「攻撃されている」という認識がすべての参加者に共有されており、昨今世界の注目を浴びている預言者ムハンマドの諷刺画に対する抗議デモも、この認識と深く結びついているという。なお,今年度も別にエジプト,シリアで「解放党」ネットワークに関する現地調査を実施する一方,文献研究によるレバノンのヒズブッラー、またイランにおけるシーア派12イマーム派の現代ジハード理論調査を継続した。
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