1.資料調査の継続:中国大陸では、海外共同研究者の協力を得て、北京、南京と上海の資料機関を中心に調査を続けるとともに、新聞に報道された関係者の資料を収集した。台湾では、国史館と中国国民党党史館を中心に調査し、数千頁にのぼる一次資料を入手した。これにより、中国東北部(旧満州)の中国共産党支配地域だけでなく、上海、南京、台湾を含む国民政府支配地域も、また、旧日本軍人だけでなく、日本人官僚や民間人に対する共産党政権と国民党政権の留用政策の解明も可能となった。日本では、外務省外交史料館と日本赤十字を中心に一次資料を調べ、中国の留用政策に対する日本側の対応を示す文書を入手した。これらの収穫を踏まえて、本プロジェクトの対象地域である中国東北部に対する調査の総括を進めると同時に、中国全般に関する今後の調査研究を企画している。 2.人的交流の推進:来年度における本プロジェクトの集大成に備えて、様々な方式を活用して台湾師範大学呉文星教授、台湾中央研究院近代史研究所謝国興教授、黄自進教授、上海復旦大学石源華教授、上海外国語大学胡礼忠教授、北京大学沈志華教授、臧運怙助教授ら学者を大学に迎え、学術交流を深めた。また、横浜市立大学山極晃名誉教授を招聘して、中国共産党の日本人捕虜政策に関する研究会を開いた。 3.研究成果の発信:調査に基づく学術論文の作成は着実に進んでおり、これから学術誌と著書によって発表することになっている。なお、今年度は、研究の成果は論文としての発表に止まらず、教育活動においても十分に活用しなければならないという反省に立脚して、大学院と学部の教育において、本プロジェクトと1930年代に関するもう一つのプロジェクトの成果を学生に向けて発信し、良い反応を受けた。
|