研究課題/領域番号 |
14402011
|
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
浪江 巖 立命館大学, 経営学部, 教授 (40066931)
|
研究分担者 |
篠田 武司 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20115405)
宮本 太郎 北海道大学, 法学研究科, 教授 (00229890)
横山 寿一 金沢大学, 経済学研究科, 教授 (10200916)
前田 信彦 立命館大学, 産業社会学部, 助教授 (20222284)
北 明美 福井県立大学, 看護福祉学部, 講師 (60300125)
|
キーワード | ワークフェアー / 積極的労働市場政策 / 労働市場弱者 / 完全雇用 / 失業率 / 雇用率 / 労働市場政策の分権化 / 雇用の多様化 |
研究概要 |
本研究は、3年目を迎え、報告書を作成した。これまで、1年目、2年目にスウェーデンの労働市場の現況、ならびにその課題についての調査を現地でおこなってきた。3年目は、スウェーデンの研究分担者を日本に迎え、日本の労働市場の現況を調査した。本研究で明らかになったことは、次のことである。(1)完全雇用を実現することを福祉国家スウェーデンの中心的政策として明確に位置付けてきたスウェーデンにおいても、その実現は難しくなっていること、(2)特に、社会的弱者ともいえる移民、青年層、女性、障害者などが労働市場から排除されるか、雇用の多様化が進む中で雇用の質が落ちていること、(3)しかし、現実には将来的に少子化の中で雇用をいかに確保するべきかがいまから大きな課題として認識されていること、(4)したがって、あくまで失業率を下げ、雇用率を上げるために政府は労働市場政策プログラムを様々な形で展開していること、(5)しかし、財政の関係、ならびにEU内でも進むワークフェアー的な労働市場政策の影響も受け、90年代以降その政策が変わりつつあること、などが確認された。では、どのように労働市場政策は変わりつつあるのか。それは次のようにまとめることができる。(1)労働市場政策の分権化、いいかえれば地方の役割を大きくしつつあることである。目標に基づく管理という手法が導入され、地方でのきめ細かい政策によって失業率を下げることがめざされた。(2)多用な雇用形態が進む中で、一部そうした労働需要にこたえるための規制緩和が進んだことである。民間企業による派遣事業が許可された。(3)労働市場弱者にたいするきめ細かい政策が実行されていることである。労働市場弱者を労働市場から排除しないことが社会結合にとって大きな課題であることが自覚されている。日本においても失業率の高止まり、また将来的には労働力不足を迎えるという事態はスウェーデンと変わらない。したがって、雇用対策がこの間、重視され、様々な政策が実行されてきた。しかし、まだスウェーデンと比べると危機感が少ないかに見える。また、雇用の多様化に対する雇用の質の悪化にたいしても議論が十分でないかに見える。本研究からは、そのことが浮かび上がった。
|