研究概要 |
本研究は3年計画の2年目であり,今回も研究分担者を北米(米国,メキシコ),アジア(インドネシア,中国,マレーシア等),オーストラリア班に分け,現地を訪問し,意見交換,資料収集・交換,フィールドワーク,今後の共同研究の打ち合わせなどを行った。昨年のSARS問題により中国訪問が見送られた以外は,情報収集はスムースに運んだ。中国については,中国の経済開発の専門家である東京経済大学の羅歓鎮助教授を迎え,研究会・意見交換を行った。 WTO体制の一層の浸透による自由貿易化,ネオリベラリズム的農政転換の動きは,避けられない現実であるとの共通認識の下で,各地域のフードシステム発展,農産開発の動向には,それぞれの地域の社会,経済,政治,自然的要因に規定された差異が認められた。その中で,グローバリゼーション下での将来を見据えた「萌芽的」取組みもみられた。一例として,IMFの構造調整による農政転換と北米自由貿易協定(NAFTA)加盟により,1990年代初頭に業補助金の大幅削減,価格政策や農業普及事業の全廃が実施されたメキシコでは,小農が自ら立ち上げた協同組合が集落レベルから州レベルの大きな組織に成長し,内外のNGOの協力を得て,自前で購買事業,信用事業,技術普及・生活改善事業を実施,有機栽培コーヒーをフェアトレードで輸出する等の「オルタナティヴ」なフードシステム形成の兆しがみられる。 いずれにせよ,環太平洋地城の農業・農村を取り巻く環境が引き続き大きく変化するなかで,フードシステムが変化している実態があり,資料の分析の結果は,今後とも学会などで発表していく予定である。
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