初年度は、米国に長期出張を行い、主に連邦政府調達に関する探索的な実態調査を遂行するとともに、カナダの政府調達調査も補足的に行った。広範な関連法規や文献を収集する一方、主要官庁の政府高官、在野のコンサルタント、専門的知識を持つ学者、主要な契約業者等、多くの人々を精力的にインタビューしてまわり、現地での問題意識、問題領域などを特定することに努めた。さらに日本を含めた各国政府調達の国際比較において、何に注目し、どのような指標を設定すべきか、そして国別・セクター別の相違点を超えて、何が問題であり、各政府がいかにしてそのような問題点を克服しようとしているのかを、具体的な事例を通して考察した。こうした作業を通して、次年度以降の研究の焦点も特定され、実行可能で意義ある研究アプローチの構想を練ることができた。 一方、民間のベストプラクティスをうまく応用し、よりよい政府のビジネスモデルを考える上で、欠くことのできない要素を考察し、提言した基本的な論文や、ケンブリッジに叢生する英国の中小企業ネットワークの事例研究を通して、官民がそれぞれの持ち味を生かしてうまく協業することの意義を論じた論文などを発表し、新しい議論のプラットフォームを広く世に提供した。 次年度は、このような成果を踏まえ、さらなる海外のフィールド調査を徹底的に行い、新しい政府調達システムの形成を促している要因やそのインパクト、問題点等をより詳細に分析するとともに、高度化する情報化の動きや、それに伴う組織再編に注目する研究の焦点をあてることを企図している。
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