研究概要 |
自動車産業を中心とする日本発のベストプラクティスが、世界の製造業の模範となったばかりか、その基本要素が他国では形を変え行政革命にまで応用され成果をあげているのに、皮肉にもお膝もとの日本では、19世紀さながらの官民の分断がいまだに幅を利かせている。英米圏の行革に比べると、日本で進行中とされる改革は、行政の基本特性の根本的な変更というよりも、表層的な組織いじりに近い。 今日の日本の行政に決定的に欠けているのは、民から官へのベストプラクティスの「翻訳能力」ではないだろうか。行政とものづくりは別物ではない。それどころか、英米の例が示すように、顧客ニーズを満たすメカニズムの面で共通点が多い。「失われた15年」の後遺症を脱却するために日本が急ぐべきなのは、必要なものやサービスを、必要な時に必要なだけ供給することに長じた、トヨティズムのエッセンスを、国家行政に生かす工夫をすることであろう。 省庁の各組織を詳細に規定した国家行政組織法が障害だ、官僚機構の内側からの変革は難しいなどと、のんきなことを言っていられる余裕はない。21世紀に生き残るのは、市場淘汰の圧力に鍛え抜かれた民間のノウハウを、見事に行政に活かす国民であろう。「スマート・プラクティス政府の創出」こそが、今世紀の国家の死活的な競争要因となろう。 本研究は、理論的にも実践的にも、今ある規則的な職位や組織(結節点)同士のつながりに、ほとんど変更を加えることなく、部分的なつなぎ直しによって全体の情報伝達経路を短縮し、ネットワーク全体を活性化させる方法について、圧倒的な証拠を提供した。 なお最終年となる平成17年度は、特に研究成果の国際的な発信に力を注ぎ、米国を代表する2つの経営学会の年次総会(下記4)や、近年伸長著しい中国各地の大学等(下記2-3)で、将来へつながる斬新な研究成果の公式発表を、精力的に行ったことを特筆しておく。1.平成16年度に続き、米MIT(マサチューセッツ工科大学)に短期滞在し、米防衛調達改革やベストプラクティス政府の研究者たちとの交流を深めるとともに、研究活動を一層進めた。2.国際発信の一環として、春には、中国沿海部のアモイ大学、福州大学、温州大学で、また、秋には、北京の中国人民大学で、それぞれ研究成果の発表を兼ねて、英語の講演会を行い、好評を博した。3.秋には、中国の杭州大学が英ケンブリッジ大学と共催した国際学術会議に招待され基調講演を、また、初冬には、川崎市が専修大学と共催した国際学術会議で、やはり基調講演を、すべて英語で行い、研究成果の積極的な国際発信を図った。4.平成17年度中に行った、米国を代表する2つの経営学会(米国経営学会Academy of Managementならびに戦略経営学会Strategic Industrial Society)の年次総会で行った、公式の研究発表は、以下の通りである。(1)"It's a Small World After All : Network Theory, Japanese Business, and Industrial Networks,"presented at the 65^<th> Academy of Management (AOM) Annual Meeting,"the Organization and Management Theory (OMT) Division, Honolulu, Hawaii, U.S.A., August 9,2005 (Nishiguchi, Toshihiro, and Brookfield, Jonathan). (2)"Technological Change and Rewiring Firm Networks : The Case of the Mobile Internet in Japan,"presented at the 2005 Strategic Management Society (SMS) Annual International Conference, Orlando, Florida, U.S.A., October 25,2005 (Funk, Jeffrey, and Nishiguchi, Toshihiro).
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