研究概要 |
本研究は,多様な価値観を持つ市民により構成される現代社会において,効率的に社会基盤を計画・整備するため,利害対立する関係諸団体の計画段階での参加を明示的に考慮した社会基盤整備の計画プロセスに関して検討を行うものである.より具体的には,国際的な比較制度分析,調査を通じた実証研究及び各制度の理論的分析を通じて,我が国において必ずしも充分整備されていない社会基盤整備の計画段階における市民参加に関する法・行政制度の設計のための政策的知見を得ることを目的とする. 昨年度は,社会基盤の参加型計画整備に関する問題点の明確化と,問題発生のメカニズムに関する記述的・理論的検討を行った. この先行研究を受けて,本年度は以下の研究を行った.まず,理論的研究として,人々の意見を1つの代表的主体の意見に変換する「意見集約プロセス」自体が,コンフリクトの発生要因となり得ることをゲーム論的モデルにより明らかにした.また,不完備情報と調整の失敗に起因する住民参加の具体的問題として,赤字ローカルバスサービスに対する市町村の補助金の分配問題を取り上げ,「信頼される技術的専門家」と,主体(地域)間を調整するコーディネータとなる「中立的第三者機関」の重要性を協力ゲーム論的アプローチにより明らかにした. 一方,社会基盤整備計画を始めとする公的プロジェクトを取り上げ、又、計画段階における市民参加を保障する法・行政制度や,市民意識の面で,先進事例を多数有するカナダ・オンタリオ州において,我が国の抱える問題点の北米との共通部分と相違点を現地調査した.共通部分に関しては,我が国に適用可能な北米の制度について調査した.なお,具体的な調査訪問先はファシリテータ養成校,オンタリオ州政府環境省「環境権」部門,環境NGO団体・都市地域計画を専門とする研究者(ライアソン大学),グランド川流域管理庁,コンフリクト解析研究グループ(ウォータールー大学)であった.
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