大規模災害があった被災地住民へのアンケート調査を通じて、住宅再建のプロセスの問題、経済的な支援内容の問題、地域コミュニティなどソフト面の復興の問題及び災害後の安全な都市空間構築の問題があることを示し、その解決に向けて「迅速な住宅再建と暮らしの再建を実現する」、「地域の活性化とコミュニティの回復を図る」、「安全で望ましい都市空間を実現する」ことを、被災地復興の際の共通目標とする必要があることを示した。国内の大規模災害からの復興事例の分析により、自力で再建できる可能性のある被災者が、支援のあり方の不備で自立した立ち直りを断念していること、また、自立を誘発するための支援体系が構築されていないことが、わが国の支援体系の弱点であることを明らかとした。また、海外の事例分析から、多様な支援体系と災害前からの危機管理体制の構築が、被災者の自立を促す手法として効果的であることを明らかとした。国内外の事例を通じて、都市の問題点の解決をはかりながら、同時に安全な空間を構築していくことが重要であり、都市の問題点を解決するには、現地解決型、回避解決型、及び、両者の組み合わせ型の方法があり、安全性向上の手段としては、住宅主体解決型、都市主体解決型、及び、両者一体の解決型の方法があることを示した。以上から、望ましい住宅復興システムの構築に向けて考慮すべき点として、被災後の早期の段階で支援策・シナリオ・ビジョンを提示し被災者の自立性を促すこと、復興の過程において支援の多様性とコミュニティの維持をはかること、二度と被災を繰り返さない都市の安全性追求に向けて住宅供給と都市復興計画の融合をはかることの3点が重要であることを示した。
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