研究概要 |
本年度は、公的介護保険制度の下,障害者のおかれる状況がわが国に類似すると推察されるオランダ・ドイツを調査対象とした。 2ヶ国ともに知的障害者GH設置主体は,19世紀に創設され,広大な敷地に旧来型の大規模入所施設を運営する法人と、これに否定的な立場から戦後発足した親の会による全国的な法人の2つに大別される。行政も入所施設居住者の削減を求めているが、財政的裏付けに乏しく、その実施の如何は運営主体に依拠しているのが現状である。 ドイツの施設タイプの法人Johannesstift(ベルリン)では1980年代から北欧の障害者福祉を範として、住居の個室化と少人数のユニット居住が開始されたが、依然としてGH設置は施設敷地内にとどまっている。親の会タイプの法人Lebenshilfe(ブレーメン)では,入居者の支援の必要性によって2タイプのGHが用意され,24時間ケアの必要な重度障害には15〜16人の居住ユニット、軽度障害では9人の居住ユニットが設定されている。 オランダにおける施設タイプの法人Willem van den Bergh(レイデン郊外ノルトヴィーク)においては,敷地内での住居更新と併行して,敷地内居住者数の削減の要請から,地域village生活移行のためのGHも新設過程にある。一方,親の会法人Philadelphiaは,地域生活の場の拡大と現存GHの住居水準の向上が,やはり同時に進められている。 GHの住居形式は,ドイツでは,居室にサニタリー設備が付加された,<II>シェアード(改良型)が主流であり,居室は30m^2/人が確保されている一方、<I>シェアード(下宿型)が主流のオランダでは,居室面積は20m^2/人前後と狭小な段階であるが、<IV>コーポラティブ型の住居形式で住戸面積57.9m^2/人の事例が新設されており,今後北欧並みに近づく飛躍的な住居水準向上の萌芽が認められた。
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