研究の第二年度である本年度は、 (1)第1年度の研究の積み残しである東ドイツ・チェコ・ハンガリーの実態を紹介する論文・研究図書の完成にあてる、(2)中国の共同型農業経営調査・分析の基礎視点を獲得するために予備調査を行う (3)日本農業についての分析対象の一つである高棚営農組合に関して、包括的な検討を行う、ことを主要な課題として設定した。 まず、(1)に関しては以下のような新たな認識が得られつつある。すなわち、旧東欧諸国の市場経済への移行過程にあっては、労働力の農外への著しい流失という点では共通性があるが、農業生産自体の後退は国民経済の状態と農業の外国貿易依存度の差違などを反映して大きく異なり、こうした状況に影響を受けながら構造再編の実態に大きな差違が生まれつつある。つまり、個人経営化が最も進んだハンガリー、協同組合が強固に残存するチェコ、法人経営の優位が特徴的だが会社など企業的性格の深化がみられる東ドイツに区分される。そこでの共同型農業経営のありかたについての検討が第三年度の中心的テーマとなる。 (2)については平成15年9月の調査を通じて、中国の研究者から最新の状況についての知見を得た。共同型経営については形式だけのものから、実質的なものまで実に多様なタイプがあるが、中国の現在の状況では形式的なものが少なくない実態が存在していることが明らかになりつつある。 (3)についてはすでに論文を執筆したが、関連図書における他の原稿が揃っていないことから未刊である。論文では詳細な経営分析に挑戦したが、共同型農業経営の一典型として高棚営農組合は土地利用型農業経営として、1800-2000時間の年間就業時間に到達するとともに、転作強化の影響もあって周年的な就業を可能としており、日本における土地利用型農業の新たな可能性を示したものとして注目に値するところである。
|