インドネシア農村の貧困とその要因の分析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14402029
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 本台 進 神戸大学, 国際協力研究科, 教授 (70138569)
• 研究分担者: 高田 理 神戸大学, 農学部, 教授 (90171446) ; 高橋 信正 神戸大学, 自然科学研究科, 教授 (00294249) ; 新谷 正彦 西南学院大学, 経済学部, 教授 (70069706) ; 山口 三十四 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (90030684)
• キーワード: インドネシアの農家家計 / 農家の投資行動 / 西ジャワへの労働移動 / 農家における労働利用 / 農業外就業機会 / スカブミ県チサアート郡 / マグラン県スチャン郡 / インドネシア人口センサス

研究概要

平成15年度に実施した中心的作業は、昨年度入手した中央統計局データを基に検討した農村における貧困構造の特性をより明確にするために農村調査を実施することである。先ず、昨年度の農村予備調査を基礎にして、農村家計経済および投資行動調査の調査票を作成した。その調査項目は農家の家族構成、資産保有、労働利用、農業所得、農外所得、農業投資、家計消費などを含み、前述の統計局調査データを補完するものである。調査対象地区として、首都圏ジャボタベックに比較的近い西ジャワ州スカブミ県チサアート郡と大都市からは遠隔地となる中部ジャワ州マグラン県スチャン郡でヒアリング調査を行った。調査農家数はチサアート郡98農家、スチャン郡70農家である。さらに労働力の移動状況を調査するために、バリ州南部の都市近郊における農業労働者の移動を50農家について聞き取り調査した。
これまでの調査で明らかになった重要な点が二つある。その一つは、土地を保有せず、農業労働者として生計を立てる農家が中部ジャワ州スチャン郡のような純農村地帯にも農家戸数の10パーセント程度存在し、それらの所得は土地保有農家に比べて著しく少なく、農村における所得格差非常に大きいことが分かった。他の一つは、チサアート郡の農業は大都市圏ジャボタベックに比較的近いと同時に、高地冷涼な地理的状況を活用し、米作だけでなく、都市消費者向け野菜生産、養殖漁業を導入し、比較的に農家収入が高い。しかし、スチャン郡の農家は米作が中心で、水利状況もチサアート郡ほど良好でないため、農家収入は低い。したがって、後者の農家においては、非常に遠距離通勤になるが地方都市において就業機会を探そうとする傾向が非常に強い。しかし、賃金率は低く、スチャン郡のそれはチサアート郡の約二分の一程度である。人口センサスによると、中部ジャワから西ジャワへの労働移動が非常に大きいが、こうした賃金格差が影響しているものと考えられる。

研究成果

• [文献書誌] 本台進: "経済発展と産業間労働力移動-インドネシアの労働力移動に関する分析への含意-"国際協力論集. 11巻2号. 101-114 (2003)
• [文献書誌] 本台進: "インドネシアにおける産業間労働移動とその要因"東アジアへの視点. 3月号. 63-76 (2004)
• [文献書誌] 新谷正彦: "通貨危機と産業連関構造の変化"通貨危機後のインドネシア農村経済(本台進編著). (未定). (2004)
• [文献書誌] 新谷正彦: "農業部門における過剰就業"通貨危機後のインドネシア農村経済(本台進編著). (未定). (2004)
• [文献書誌] 山口三十四: "アジア諸国の人口成長と経済発展一日本、台湾、中国、タイの過剰人口と成長会計分析-"国民経済雑誌. 187巻3号. 35-48 (2003)
• [文献書誌] 高橋信正: "スカブミ県チサアート郡の農家経済"通貨危機後のインドネシア農村経済(本台進編著). (未定). (2004)
• [文献書誌] 高田理: "インドネシア農村における村落協同組合(KUD)の役割と評価"自然科学研究科紀要. 20号-B. 1-9 (2002)
• [文献書誌] 高田理: "農民グループと村落協同組合の展開"通貨危機後のインドネシア農村経済(本台進編著). (未定). (2004)
• [文献書誌] 中村和敏: "インドネシアにおける中小企業金融の発展"アジア太平洋研究報告. 12巻. 21-29 (2003)
• [文献書誌] 中村和敏: "通貨危機によるルピア下落の影響"通貨危機後のインドネシア農村経済(本台進編著). (未定). (2004)
• [文献書誌] 本台進: "通貨危機後のインドネシア農村経済"(未定)(発行所:日本評論社). (2004)