研究概要 |
1.灌漑の時空間組織と規則・モラルに関する現地調査 昨年度に引き続き,アバーデア山麓ライキピア県ムタロ村を対象として,キクユ人小農の入植過程,谷底灌漑農業における共有(共用)環境資源アクセス制度の実態(灌漑水路上流と下流の間の利害調整,および灌漑運用実態の変化と水利組合規則の改訂),野菜生産の多様化(協同組合を通した輸出向けサヤインゲン等の契約栽培を行うための実態)とその灌漑運用に対する影響について,継続モニタリング調査を実施した。協同組合を通して水利交渉力を高めた水路下流農民が灌漑頻度の高い自給補助的蔬菜契約栽培を実現した実態が明らかとなり,半乾燥地域における重要かつ希少な水資源の地域農民による共同管理の可能性について手がかりを得た。 2.河川流域の地形分類と農業的環境利用に関する現地調査 昨年度と同様に,上記地域およびアバーデア山麓ニェリ県エンダラーシャ地域において地形分類を行うと共に,農業的環境利用と密接な関連が予想される微地形変化プロセスに注目しつつ地形・表層地質の定点観測を継続し,将来にわたる中期的モニタリングの基礎を築いた。とくにマスムーブメント(ソイルクリープ,小規模地すべり,ロックフォール等)の卓越する斜面において,微地形分類,土壌断面の記載,土壌サンプルの採集を進めた。そして,個々の斜面プロセスの強度や斜面安定性を評価するために,弾性波検層・土質試験により風化残積土および表層移動物質の空間分布や土壌物性を明らかにした。 3.都市農村関係・農村間関係と社会的ネットワークに関する現地調査 上記地域における都市-農村関係の具体例として,食糧流通の実態をとりあげ,農畜産品および工業製品の流通を農村側から調査した。 4.研究成果の取りまとめと刊行 3ヵ年の研究成果を総合し,ケニア中央部・半乾燥地域における農業的環境利用の構造と持続可能性に手がかりを与える報告書を作成した。
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