研究概要 |
人口急増中のケニア中央部定着農耕社会が,耕地を半乾燥地域に拡大するなかで形成してきた社会経済と,持続的環境利用(灌漑農業と斜面利用)について検討した。 1.灌漑の時空間組織と規則・モラルに関する調査 エワソ・ンニィロ上流ライキピア平原の一灌漑計画地を対象として,入植過程と土地利用の変化,土地と個別灌漑手段の所有,乾季灌漑作の実態を吟味し,入植小農の社会経済的階層化と灌漑便益配分の関係を認めた。ただし,輸出蔬菜契約栽培のようにグローバル性,季節性,収益の労働費節約への依存性のためリスク回避的な小規模生産戦略を採る生産者が多い場合,両者は相乗するとは限らない。そして,水・土地・労働力利用は個別化していわば個別自立型モラルが一般化しており,これが水路改良における費用配分や水利組合規則の改定など協調行動を要する案件にも影響して,灌漑システムという共用資源の管理に困難を来している現状を明らかにした。 2.河川流域の地形分類と農業的環境利用に関する調査 エワソ・ンニィロ上流の異なる気候条件にある2地域において,特有の斜面プロセスを地形学的視点から明らかにした。熱帯性高地気候下にあるアバーデア山地では谷壁斜面上に斜面崩壊地形,多重スランプによる階段状小崖が頻繁に認められ,比較的急速なマスムーブメントによる斜面更新が卓越している。これに対して1の地域では,概して斜面更新の強度は相対的に弱い。ただし一部で顕著な面的侵食が発生したケースも認められ,半乾燥地域においてシートウォッシュは,土地利用形態によって斜面プロセスとしてより強く発現し,急速な地形変化をもたらすことがあり得るといえる。 3.都市農村関係・農村間関係と社会的ネットワークに関する調査 1の地域の農村交易センター商人が,ケニア経済の構造調整後に試みてきた各種商品のマーケティング戦略の諸相を明らかにし,流通から地域間の関係を検討した。
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