研究概要 |
構造調整プログラムの実施,北米自由貿易協定への加入等を経験し,途上国のなかでも最もドラスティックに経済の自由化が進行している国のひとつがメキシコである。同国は,米国の膝元ということもあり,移民労働者問題など両国の格差から生まれる様々な問題を内包するとともに,国内でも貧富の格差の拡大,人種問題,政府の腐敗等さまざまな社会,経済,政治的矛盾を抱えている。 「開発」の本来のアクターである市民社会がどのようにグローバル化に反応し「自己組織化」が発生するのか,それはオルタナティヴな開発となるのか,また,グローバルな政治経済空間における「周辺化」を余儀なくされた途上国農村に「希望の空間」(Spaces of Hope)を見出し,再構築する糸口となり得るのか,これらが本研究のリサーチクエッションである。 初年度の研究成果である「プロセスとしての開発:地域開発を考える3つの次元」(開発学研究,13巻2号)で示した理論的フレームについて,フィールドワークによりこれを実証することが2年度目の主たる研究活動内容である。平成15年夏の現地調査では,オワハカ州を拠点に農村開発,環境保全,人権擁護等に関わる現地NGO,5団体を訪問し,活動の背景と組織化のプロセス,問題点,住民および政府・ドナーとの関係性,プログラム・プロジェクト内容,等に関する詳細な聞き取り調査を行った。成果は順次,学会投稿の形で発表している。 平成15年度の研究成果として,レフリー付学会誌掲載論文が4本(このほか,投稿中論文が2本,投稿準備中論文が2本,研究会シンポジウム報告が1本ある。研究代表者は途上国地域開発に関する学際学会である日本国際地域開発学会から平成15年度学会賞(奨励賞)を受賞した(受賞対象論文「メキシコの教会系の社会開発運動とNGO活動の変遷:権威と市民社会の狭間で」(開発学研究,14巻1号),表彰式は16年4月24日)。
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