研究概要 |
経済のグローバリゼーションが進展する一方,地域及びそこに息づく現地の市民社会からの「反応」としてのローカリゼーションという命題が,地域開発学研究において着目され始めている。具体的には,1990年代のNGO研究の成果を踏まえつつ,現地住民組織,現地NGO,それらを直接・間接的にサポートするドナー組織(国内外,政府を含む)らの諸アクターの役割とそれらの相互関係に,地域の「反応」の実情を読みとるできるものと考える。メキシコは,北米自由貿易協定(NAFTA)加盟後7年を経て,途上国の中でも,自由貿易圏への統合の農業・農村セクターへの影響が最も顕著に発現している国である。本研究を通じて,グローバル化及び新自由主義的政策オリエンテーションに伴う経済社会空間の急激な変化というマクロ上部構造的な文脈と当該地域の自然・社会・政治的環境という地域固有の文脈に強く規定されつつも,下からの共同体的市民社会に立脚する対抗的ダイナミズムが存在することが,いくつかの萌芽的な取組事例を通じて,一定の成果として確認できた。これらの経験から生まれた「言説」と実践の相互作用としてのNGO活動の実態も確認することができた。これにより,西欧先進国とは異なるラテンアメリカ第三世界における「市民社会論」を拠り所に,より絞込んだ課題を設定し,内発的地域づくりとグローバル市民社会ネットワークの相互関係を意識しつつ,グローバル化時代の地域開発への「オルタナティヴ」について,批判的検討を行うための材料を提供することができたのではないかと考える。
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