現在、先進国が直面している資源・環境問題などの諸問題を解決するために、エネルギーや資源の消費が非常に少ない伝統的ライフスタイルと情報の関係を解明する研究を行った。世界に点在する伝統的なライフスタイルのうちから、アーミッシュ、アボリジニ、マオリのライフスタイルをとりあげ、彼らのライフスタイルとメディアや教育との関係を明らかにし、現代社会の場合とを対比させて、人間の情報活動の観点から、持続可能な社会のあり方を提示することを目的とした。研究は、海外現地調査と内外の各種文献資料の蒐集によって行った。本年度の現地調査は、オーストラリアのアポリジニとニュージーランドのマオリについて実施し、アメリカのアーミッシユについては国内外の文献資料による分析を行った。その結果、これら3つの社会においてはいずれも、現代の情報化社会の中で、それぞれの伝統的ライフスタイルを守ろうとする試みが、情報活動、特に、メディアや教育との関係においてみられる事が明らかとなった。このうち、アーミッシュの伝統的ライフスタイルと食情報、教育との関係についての結果を、3つの論文にまとめて報告した。そして、彼ら自身が発行するメディアFamily Journalとアーミッシュ学校における教科書の分析によって、アーミッシュ社会における、食および健康関連情報の主体的管理が、アーミッシユ社会における伝統的ライフスタイルの保持に大きな寄与をしていることを明らかにした。さらに、アメリカにおけるメディア、教科書との比較分析より、彼らの社会および現代社会が、今後持続可能となる要件を情報活動の観点から明らかにした。
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