先進国が直面している資源・環境問題などを解決し、持続可能な社会を展望するために、アメリカのアーミッシュ、オーストラリアのアボリジニ、ニュージーランドのマオリについて、ライフスタイルと情報との関係を調査研究した。特に、現代文明に対して大きな距離を保っているアーミッシュ、近代社会に順応したマオリ、そして、近代社会の中でいまだ受動的な状況にあるアボリジニの教育情報を対照させ、詳細な比較研究を行なった。その結果、アーミッシュの場合は、宗教的規範が強く、それが、彼らの情報活動や教育を大きく規定していることが明らかとなった。それに対してマオリは、西洋のライフスタイルを大幅に取り入れ、西欧文化に適応しすぎた反省から、アイデンティティの復活とマオリ文化の復興を、教育やマスメディアをとおして行ってきている。特に彼らの伝統的価値観を、資源・環境の管理や持続可能な社会の構築へと結びつけようとする動きが注目される。一方、アボリジニは、マオリやアーミッシュよりいまだ受動的であり、ライフスタイルを自ら決定するには至っていない。しかし、彼らに対して、電子メディアと教育による新しい情報管理の試みが始まっており、今後、彼らのライフスタイル決定に寄与する可能性は大きいと考えられる。 また、4年間にわたる研究の最終年度である本年度は、これまで得られた成果の上に立ち、アーミッシュ、マオリ、アボリジ社会と日米両国との比較もおこない、情報の主体的管理が、伝統的ライフスタイルとどのように結びついているかをまとめた。特に、意図的、系統的な情報管理がどのように行われているかを明ちかにし、社会の持続可能性のコンテクストの中で、それらの情報管理の意味を明らかにし、情報の主体的管理による持続可能な社会のあり力を提示した。そして、これらの成果をまとめ、出版した。
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