研究課題/領域番号 |
14402050
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
下渡 敏治 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00120478)
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研究分担者 |
長坂 貞郎 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70318385)
ROY Kingshuk 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10339294)
上原 秀樹 明星大学, 経済学部, 教授 (80151827)
板垣 啓四郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20130304)
高樋 さち子 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (00261644)
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キーワード | 工業化 / 都市化 / 水資源劣化 / 環境破壊 / 工業開発優先 / 資源利用技術 / 食料資源生産 / 環境政策 |
研究概要 |
東アジアにおける急速な経済発展は、工業化、都市化の進展による水資源の大幅な需要増加をもたらすとともに水質汚濁などの水資源劣化や水資源利用をめぐる工業と食料・農業生産との間での摩擦を引き起こすなど、さまざまな間題を露呈している。さらに経済発展による食料の需要拡大、食生活の高度化、多様化の進展は、過放牧や多収穫を目指した過度の農地利用による土壌劣化や農地の砂漠化といった新たな資源環境問題を生起させている。このような状況が持続することになれば、東アジアの資源及び環境に対する負荷がますます増大し、これに耐えられない状況に陥ることは明らかである。本研究では、以上のような問題意識から東アジアの自然資源及び環境の今日的状況を明らかにし、研究対象地域の農業・農村がその食料供給の面で地域の自然資源や環境とどのような関係にあるか、またそこでの資源利用のあり方や環境との関わりにおいて問題点を解明し、あるべき資源環境と食料資源生産の関係を構築するための条件と対策を明らかにしようとするものである。 本年度は、高い人口密集に加えて、経済の成長率が世界のどの地域よりも高く、しかも効率的な資源利用技術が普及していないために資源の浪費と環境破壊が著しいなどの理由により、また、SARSやイラク戦争の影響によって夏期休暇中の現地調査が困難となったことなどにより、現地調査の対象地域を中国黄河流域と中国沿海部に絞って実施した。 黄河流域及び中国沿海部では、急激な工業化、都市化の進展によって自然資源の劣化と環境破壊に伴う食料・農業生産環境の悪化が進んでおり、資源環境問題と農村貧困問題を重視した中国政府もこれらの問題を重要課題と位置づけ、関連法規などの整備に努める意向であるが、今回の現地実態調査によって、現実と政策の乖離が大きく、資源環境問題の実態把握とそれらの実態に即した解決方法を提示することの重要性が改めて確認された。食料生産との関連では、経済発展、工業開発優先の経済政策のもとで、食料・農業生産に必要な水資源が十分に供給されないといった人為的とも云える新たな資源問題が生じるなど、資源・環境と食料資源確保の相互関係はむしろ悪化しつつあることが明らかとなった。 以上のように、2月末から3月中旬にかけて実施した現地実態調査によって、前年度の現地調査で十分把握することができなかった中国黄河流域及び経済発展著しい沿海部での資源環境劣化の実態とそれらが食料・農業生産に及ぼす影響を捕捉することができた。さらに、今回の現地調査によって資源環境問題並びに食料資源生産に関わる多くの研究資料を入手すると共に、黄河委員会、北京大学、農業科学院、河南財経学院などから貴重な情報を得るなど多大な成果をあげることができた。現地調査結果の詳細は、昨年度に引き続き中間報告書として取り纏める。
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