研究課題/領域番号 |
14402050
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
下渡 敏治 日本大学, 生物資源科学部, 教授 (00120478)
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研究分担者 |
上原 秀樹 明星大学, 経済学部, 教授 (80151827)
KINGSHUK Roy 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (10339294)
長坂 貞郎 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (70318385)
高樋 さち子 秋田大学, 教育文化学部, 助教授 (00261644)
板垣 啓四郎 東京農業大学, 国際食料情報学部, 教授 (20130304)
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キーワード | 食料需要構造 / 自然資源 / 経済開発 / 砂漠化 / 生態系 / 資源収奪 / 環境汚染 / 新食料システム |
研究概要 |
東アジア地域における安定的な食料資源確保の問題は、同地域における土地(耕地)に対する人口圧力の大きさと急速な経済成長と人口増加に起因する食料需要規模の巨大さという点で他の発展途上地域の食料問題とはその基本的性格を異にしている。13億人の巨大人口を擁する中国では年間5億トンの食料穀物が生産・消費されており、それは改革開放が緒についた1970年代末に比べて1億トンの増加である。しかも急速な経済発展と国民所得の向上によって消費される食料需要の内容も従来とは大きく変化している。食料の需給関係と消費構造の急速な変化は経済発展が持続する東南アジア地域でも同様であり、東アジアにおける食料消費の趨勢は人口増加がピークに達する今世紀半ばまで基本的に変わることがないといってよい。こうした中にあって、東アジア地域の食料供給に大きな異変が生じている。その基本的要因は、同地域における工業化・都市化の急速な進展によって、従来、食料生産に利用されてきた農地が工業開発や宅地開発などの需要増大によって都市的用途に転換された結果、農業用地が大幅に縮小し、同時に工業及び生活用水の需要拡大によって本来、食料生産に使用すべき水資源が農業以外の用途に振り向けられるようになったことにある。とりわけ、中国の黄河流域から沿海地帯の一部においてこうした現象が顕著に現れている。元来、水資源が極度に不足している中国中西部及び東北部の乾燥地帯においては3年から10年の間隔で大旱魃が発生しており、一方、長江以南の東部・南部地域では大河の氾濫による周期的な大洪水の被害にさらされてきたが、今回の研究によってこれらの地域では、近年、旱魃と洪水の発生周期が短くなっていることが確認された。しかも大都市を擁する黄河などの下流域では、経済発展に伴う用排水の増加によって、水質の悪化が深刻となっており、こうした自然資源の収奪や環境の劣化は食料生産に甚大な影響を及ぼしはじめている。一方、東南アジア地域のタイでは、外資系或いは現地のアグリビジネスによる商業的なエビ養殖事業の拡大によって、沿岸部のマングローブ林が破壊され、さらに内陸部にまで拡大したエビ養殖によって農地や農業用水の汚染が深刻となり、基幹作物である米の生産にその影響が及んでいる。事態を重く見たタイ政府はエビ養殖事業の規制と共にマングローブ林の伐採禁止区域を設けるなど規制に乗り出しているが、十分な成果は得られていない。さらに、世界的な需要拡大によって大規模なオイルパーム園の開墾がすすんでいるマレーシアでは、自然生態系や環境を無視した大規模農業開発による無秩序な森林伐採によって貴重な生物資源が消失すると共に水質汚染が深刻となっており、化学肥料や農薬の投入等による土壌汚染が進展している。またベトナムにおいても環境問題が深化しつつあり、自然資源の保全と同時に環境と共生可能な農作物の導入を含めて新たな食料システムの構築が急務となっている。
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