地球環境問題の克服は持続可能な社会の建設にとって中心的な課題である。開発途上国のいくつかの環境プログラムにおいて政府開発援助が想定した効果を充分出し得ない中で、NGO・住民などが協力する参加型プログラムが徐々に成果を上げつつあると言われる。しかしこれらの参加型環境プログラムが普遍性を確保するためには、なお克服すべき課題が多い。参加型環境プログラムは大きな可能性を持ちながらも完成されたものではない。 研究対象地域であるフィリピンネグロス島のマングローブ林の90%以上が伐採されてしまった。再生事業も住民・NGOなどが取り組んでいるが遅々として進まない。参加型植樹プログラムに携わってきた人々の経験を生かしながら、地域のニーズに応じて柔軟に進化する参加型再生プログラムの発展モデルを提案することを目的とする。1年目の平成14年度は、ネグロス島における植樹サイトにかかわる既存資料を収集するとともに、地元大学・行政や環境NGOの協力を得て、植樹サイトおよび近隣村落でマングローブ林に関わるインタビュー調査を実施した。2年目の平成15年度は再生地域、自生地域に分けてGPS測量を実施した。系統的に収集した社会科学データをデータベース化した。さらに、これらの成果は、パソコン上でGIS化を行うための基礎資料となる。既存データベースと組み合わせることで、目的にあわせた地図の作成が可能となり、新たな知見や関係者の合意形成が得られやすくなった。3年目の平成16年度では、今までの成果とともに、調査対象地域の類型化を行い、NGOの参加などそれぞれに適合したプログラムを提案し、報告書にまとめた。
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