研究分担者 |
多田 隆治 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (30143366)
磯崎 行雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (90144914)
浜野 洋三 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (90011709)
永原 裕子 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80172550)
大河内 直彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球内部変動研究センター, 研究員 (00281832)
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研究概要 |
本研究では,その詳細がほとんど理解されていない原生代初期の氷河性堆積物の地質調査に基づいて,この時期にスノーボールアース・イベントが生じた可能性および酸素濃度の増大や酸化還元環境の変化との関連を実証的に検証することを目的とする. 今年度は,2004年7月28日〜8月12日,アメリカ合衆国ワイオミング州に分布するスノーウィパス累層群,およびカナダ・オンタリオ州に分布するヒューロニアン累層群において地質調査及び岩石試料採取を行った. まず,ヒューロニアン累層群に含まれる硫化物には,基本的に硫黄同位体の質量非依存性分別効果(MIF)はみられないことが分かった.唯一,最下部のリビングストーンクリーク層に取り込まれている礫岩中の硫化物にのみ,Δ^<33>S=-1.7〜+3.6%という明らかなMIFの証拠がみられた.このことは,この硫化物の形成時には大気中の酸素濃度は非常に低かったが,ヒューロニアン累層群が形成されたごく初期にはすでに現在の10^<-5>程度であったことを示唆している. さらに,泥質岩中のマンガンの含有量を調べたところ,最も若い氷河性堆積物であるゴウガンダ層のダイアミクタイト直上に,バックグラウンドの約60倍の濃度(1.7wt%)でマンガンが濃集していることを発見した.また,マンガン濃集層のすぐ下にヘマタイトを含む赤色岩が存在することが分かった.これらのことは,ゴウガンダ氷河期直後に大気及び海洋表層水中の酸素濃度が増加したことを示唆する.マンガンの濃集や赤色岩の出現のほか,その形成年代が誤差の範囲で一致することから,ゴウガンダ層は南アフリカ共和国のマクガニン・ダイアミクタイト層と対比される可能性が示唆される.したがって,両者は当時のグローバルイベント(全球凍結イベントと酸素農大イベント)を反映したものである可能性が高い.
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