研究概要 |
本研究で得られた主な研究成果概要は以下のとおりである. 1)オーストラリア中央部のMasgrave山地のWoodroof faultおよび中国大別超高圧変成帯に産出した大規模シュードタキライトに露出した大規模シュードタキライトは,地殻浅部の脆性破壊領域から深部の塑性変形領域までの地震断層の繰り返し運動により形成されたことが示された。 2)上記2ケ所のシュードタキライトはカタクレーサイト・マイロナイトおよびマイロナイト化したシュードタキライトとともに同じ断層露頭で共存していることが明らかとなった。これは,震源から始まった地震断層の破壊は断層深部の塑性変形領域まで伝播して行ったことを示している。 3)糸魚川-静岡構造線活断層系:下円井断層に産出した粉砕起源のシュードタキライトを発見した。このシュードタキライトは糸魚川-静岡構造線活断層系の完新世後期の最新活動により形成されたものであることが明らかにされた。 4)1999年台湾集集地震の車龍埔地震断層のボーリング掘削コアの解析を行った。その結果,(1)断層岩は主にS-C構造の発達したタクレーサイト,断層角礫およびガウジから構成されること,(2)地震断層は50°〜80°以上の高角度の横ずれ変位成分を伴った逆断層であること,(3)地震断層すべりはS-C構造の発達した1〜3mmの断層ガウジ帯に集中したこと,などが明らかにされた。 5)2001年中国昆崙山中部M8.1地震の昆崙地震断層帯の調査研究では,地震直前と直後に撮影されたIKONOS衛星画像を用いて,地表地震断層の詳細な幾何学的な分布形態および変位量分布の解析を行った。解像度1mのIKONOS画像を用いて,全長400km以上の主要なセゲメントの地表地震断層の形態構造を異なるスケールでマッピングを行った。その結果,巨視的に地表地震断層のストランドはに直線状であるが,地表面において1m分解能の画像でのトレースは長さ数センチから数十メートルの雁行状配列のラプチャーから構成されることが明らかになった。また,地表地震断層帯は,幅数メートルから数キロメートルまで変化するが,一般的には数十メートルの範囲に狭い帯を成している。IKONOS画像から測った変位量の分布はほぼ現地で観測した変位量とよい一致を示している。地震直後で撮影されたIKONOS画像はチベット高原のような調査困難な高山地域の地震断層の幾何学的な形態や変位量分布の解析に有効である。
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