研究課題
基盤研究(B)
タイにおける地盤汚染の拡大機構の解明とその対策に関する本研究は、タイ平野部における地盤汚染に着目し、地盤汚染の実態把握、拡大機構の解明とその対策について明らかにすることを目的とした。特に、従来の環境工学分野であまり調査・研究されていない排水路周辺の地盤特性、および蒸発散による地下水と汚染物質の移動メカニズムの解明を行である。なお、本研究は平成14〜16年度の研究であり、その主な成果はつぎのとおりである。タイのおける地盤汚染や汚染防止規制に関する基準は、先進国に比べて比較的緩い内容であるが、地盤汚染は、先進国と同様な工場排水、鉱山(ヒ素など)、エビ養殖、塩田などの人為的なものの他に、岩塩などによる自然汚染がある。しかしながら、前者の汚染は予想よりも実際に調査・測定が行われているケースが少ないこと、行われていても未公開のものが多く、十分に実態を把握することができなかった。また、汚染物質の移動機構を明らかにするため、水分の蒸発散測定を行った結果、地形変化の小さい地域では、地表面や植物から蒸発散が大きく影響し、地表面付近に汚染物質が高濃度化することが明らかになった。これは、汚染した河川水や地盤内の汚染物質が地盤に浸透し、水頭勾配や蒸発散により地中を移動して汚染が拡大するためである。したがって、バンコク平野部における地表付近の主たる地盤汚染は、河川水、地下水、土壌の複合型の汚染であることが明らかになった。この種の汚染は、近い将来ミャンマー、ラオス、カンボジアなどの周辺国においても問題になると考えられ、早急に対策を行う必要がある。汚染の拡大防止は、汚染源を絶つことが第一であることはいうまでもない。高濃度に汚染した地域は、遮水材料などによって地下水の移動を防ぐ対策工を行い、その後にその地域内を浄化処理することが肝要である。
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